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2008 シカゴ カンファレンス
猪俣 淳 CPM  

 成田から飛行機で12時間。シカゴは金融・流通の中心地でNY・ロスに次ぐ全米3番目の大都市です。
10月15日から4日間の日程で開催された2008年IREM/CCIM合同カンファレンスはアメリカ国内のみならずブラジル・カナダ・チリ・中国・ハンガリー・メキシコ・ポーランド・ロシア・スペイン・韓国・台湾・そして日本。世界中のCPMが集結する年に一度の大イベントです。

 シカゴは近代建築の歴史を語る上では欠かせない聖地でもあります。市内から列車に乗って30分ほどの郊外にあるフランクリン・ロイド・ライトの自邸&事務所をCPM仲間で見学に行きました。
ライトは19世紀末から20世紀初頭に活躍したアメリカを代表する建築家であり、フランスのル・コルビジエ、ドイツ出身のミース・ファンデルローエと並んで近代建築の三大巨匠と呼ばれています。
彼は旧帝国ホテルの設計もしていますし、彼の弟子のアントニン・レーモンドの弟子は前川國男、その弟子は丹下健三、その弟子は黒川紀章と日本の建築の世界にも脈々たる影響を与えています。また浮世絵の収集家としても有名であり、日本ブームであったその頃の時代背景からか、日本の様式から多くの影響を受けています。
欄間や壁の仕上げ、水平のラインを強調した外観や建具の作りこみなど日本家屋のテイストがあちらこちらに見て取れます。
周辺は高級な住宅街ですが「世界一ライト建築が密集している地域」ということでも有名です。

 

ひっそりと、住宅街のなかに文豪アーネスト・ヘミングウェイの生家もありました。

 二日目まではIREM(全米不動産管理協会)のプログラム、三日目からはCCIM(商業不動産のAMを中心とした団体)との共同プログラムが開始されます。

 登録をすませていよいよ本番開始です。
最初に参加したのは「海外サービス審議会」。
カナダ・日本・ポーランド・韓国・ロシアとウクライナ・ブラジルの順にそれぞれの国の支部でどういった取り組みをしているかという発表とIREM本部に対する要望をやりとりしたりします。

 午後からはIREM会員を対象とした本部オフィスの一般公開中と聞き、表敬訪問させていただきました。
夜はアメリカ西海岸を含めた環太平洋地域の会員が集まってリージョナルセミナーという名のパーティーがミシガン湖畔のレストランで開かれました。

 金融危機の影響についていろいろ聞きたかったところでしたが、みんなあんまり深刻な感じはしていませんでした。
逆に買いのスタンスをとっている人もいますし、住宅不況から賃貸住宅の稼働率や賃料が上がるといったポジティブな面を感じている人もいます。新規の購入やリファイナンスには影響はあると思いますが、十分な担保が出来ているつまり新規参入ではない投資家には金融機関もおカネをだしますしね。

 四日目の午前中は現地のCPMがコーディネートしてくれたプロパティーツアーで実際に管理している物件などの見学です。最初に見に行った物件はシカゴのランドマークともいうべき「マリーナシティ」。トウモロコシと揶揄されるとてもユニークな建築です。

 鉄筋コンクリート造、高さ179mの61階建て896世帯。完成は今から41年前の1967年。近代建築3大巨匠のひとりミース・ファンデルローエの弟子、バートランド・ゴールドバーグの作品です。「市のなかの市」というコンセプトで建物内に住居・駐車場・マリーナ・レストラン・ブルースのライブハウス・ボウリング場・ホテル・バー・・・なんでも揃っています。

 ここに住み、ここで働き、ここで遊び、そしてこのマンションを9室所有しているCPMの女性に案内をしてもらいました。
古さを感じさせない素晴らしい物件だと思います。稼働率もかなり高いです。
42uの一番小さいスタジオタイプの賃料は坪単価7700円程度で9万円後半。管理費は2万7千円程度ですから利回りはイマイチです。売買される金額は1800万円位だそうですから表面で6.7%、ネットで4.5%というところでしょう。住むんだったら賃貸かな。
NYだと物件も高いけどもっと賃料はとれます。シカゴは意外と賃料がとれません。
でも住んでみたいですね。3室をぶち抜きで(モーメント加重を負担している梁と柱をいじらなければ何部屋でも繋げます)使っている彼女の部屋も見せてもらいましたが素敵でしたよ。管理費は8万円ですけどね。
 1階から19階までは自走式の駐車場で月額2万2千円ですが、出かける時に管理事務所に電話すると車をエントランスまで回しておいてくれるそうです。
入居者用に会員制のシェアカーも用意されていて1時間10ドル、6時間を超えると一日60ドルで使えます。

 次は道路を渡ったところに建築中のトランプタワーです。
こちらは現在75%程度売却済みで「経済危機の影響はどうですか?」という質問を投げかけたところ「デベの融資が出なくなったおかげで競合物件が軒並み中止になったので逆に良かったです」と強気な発言をしていました。(その後ドイツ銀行からの融資がストップして裁判沙汰になったという報道がありました。)

 

 こちらはいわゆる億ションで、見せてもらった一番大きい部屋はシカゴ市内とミシガン湖を見下ろす3LDK約100坪の間取りで価格は3億5000万円(!)。貸した場合の賃料は坪単価1万7千円程度で105万円といったところですから表面利回りで3%台です。
もっともこのクラスの物件を買うのは投資のひとではなくて自分で住むためのものを現金で買うというのが殆んどだそうです。

 午後は国際商習慣フォーラムです。「サブプライムに端を発した経済危機の影響」という議題で各国の発表がありました。
 ロシアからは「シリアスな状態が続き銀行が融資を出さない。ただ、新規の開発案件だけが影響を受けておりすでに建っている物件に関しては対して問題は発生していない。わが国は94年・04年と2度の金融危機を乗り越えていて対応は慣れています。問題は(1)借主の問題(2)管理の質の問題。こういった時期だからこそ効率化への新たなプロセスを見直すチャンスだと捉えています」というおよそ十数年前までは共産主義国家だったとは思えない発言がありました。
また、カナダからは「80年代初頭と同じくアメリカよりはリスクとその影響は少ないと感じています。 カナダ人はなんでも政府のせいにする国民性ですが、大量に売り出される差し押さえ物件を買い集めたり、経営効率を上げようと考えるオーナーから管理をとれたりという動きがありポジティブな面を捉えている企業の業績は逆に上向いている」といった意見もありました。
ポーランドは「商業物件に悪影響が出ている。より賃料の安い物件へのシフトが始まっている手順の見直しを含めたメンテナンスコストの切り下げを図っている」なんていう意見もありました。
そのあと最後の質問として「米国大統領選が与える影響は?どちらが勝ったほうが皆さんの国に有利だと思いますか?」なんていうタイムリーかつ興味深い質問のやり取りがありました。
前の日にマケイン・オバマ両氏のディベートがあってTVはその話題で持ちきりでしたからね。
シカゴはオバマ氏の地元ですし、IREMはマケイン氏の属する共和党支持ですから微妙な立場なのです。
 あっというまに2時間にわたるフォーラムが終わり、次のスケジュールまで2時間ほど時間が空きましたのでタクシーを借り切って、気にかかっていた二つの建物を見学に行くことにしました。


シカゴ大学の構内にあるフランク・ロイド・ライト設計、プレーリー様式の最高傑作といわれる「ロビーハウス(1910年完成)」といまでこそ世界中のあらゆる都市で見かける全面ガラス貼りのビルの原型モデル、ミース・ファンデルローエ設計の「レイクショアドライブアパートメント(1951年完成)」。
どちらも約100年前&57年前という時代を感じさせない、本当に素晴らしい作品で感激しました。レイクショアなんていまだに人気物件で常時満室ですからね。

 近代建築好きにとってシカゴは聖地だと思います。

 五日めは早朝から日本支部の今後の運営について、IREM本部事務局長のラッセル、2010年会長のランディ、ボードメンバーのナンシーに時間をもらって会議をしました。
日本からは佐々木会長も参加しています。
一番早く会議室に行って時間をもてあましたものですからオバマ氏の似顔絵を書いていました。IREMジャパンも「Change!(変わらなきゃ)です」
そのあと、ポーランドの皆さんと一緒にまたまた物件見学ツアー。

この日は新築分譲マンションの販売事務所に行きました。これがまた凄いんです。

 名前は「シカゴ・スパイラル」。


そのまんま、まるでドリルを空に向けて突き立てたようなデザインで、まぁかなりSFチックなマンションです。
「スタンダードになると思いますね・・・23世紀の」と言ったら現地の担当者が笑っていました。
コンクリートとステンレススチールとガラスでできた高さ600m・150階建て(!)。完成は2013年を予定していて世界で一番のっぽなマンションになる予定です。各階2.44度ずつずれながら螺旋状に構成されていて、1194世帯全てが違う間取りになっています。価格は坪単価5〜700万円(!!)、まぁ銀座の2倍です。一番高価なペントハウスは40億円で成約済み・・・。
トランプタワーと顧客はダブりませんか?と質問したら鼻で笑われました。
一番狭いスタジオタイプは55〜82uで8000万円〜1億7000万円。
まだ、基礎をやっている段階ですが30%が売れているんだそうです。ほとんど個人に。
サブプライム問題も関係ないといっていました。殆んど現金買いですし。
海外(アラブ?)の人が結構いるらしいですが、外からおカネを集めてくるにしてもアメリカの富の奥深さを改めて感じます。

 そのあと午後からは地元シカゴのIREM会員で教科書を何冊か書いているハーマン夫妻にマーケティング(MKL)とスタッフ教育(HRS)に関して2時間半ほどのレクチャーを受けました。
そのなかで入居者に対して行なう有効な四つのアンケートというのがありましたのでご紹介しておきます。

1)この物件は10点満点で何点ですか?
2)どうやったら10点になりますか?
3)ここに2年は住み続けると約束してもらえますか?
4)こうやったら2年は住むという条件は?

 シンプルですが、いい質問です。
入居者に長く住み続けてもらう「テナントリテンション」は賃貸住宅の経営をする上では重要ですが、意外とつまらない理由で引っ越してしまうことってありますのでこれを未然に防ぐことができます。
それから入居者に連絡をするときって滞納の場合が殆んどですが、きちんきちんと家賃を払ってくれる入居者と親密な関係を築いていますかといわれると実は電話一本していない場合が多いんですね。
クリスマスや正月などみんながカードをやり取りする時期は効果が半減するのでバレンタインデーにカードを贈っていますなんて言ってました。誕生日でもいいと思います。

 最終日は1928年に建てられた世界最大の商業施設、「マーチャンダイズマーケット」を訪問しました。

 ここは省エネ・リサイクルの賞を獲得した施設で、そのあたりを現地でレクチャーしてもらうという企画です。

 「Sustainable=維持可能な」という単語はここ何年かで全米で頻繁に使われているキーワードですが、それをビルもテナントも一体になって取組んでいるというわけです。

91年にゴミの分別処理をはじめ
93年にビル内で使用する洗浄剤を全て無害のものに
97年に自転車通勤を奨励

そして2000年にグリーン化(省エネ・リサイクル)をはじめて環境認定であるLEED EBというのをもらったそうです。
「グリーン化はビル運営のコストを下げ価値を上げる。またグリーン化できない企業は競争力を失う」という言葉が印象的でした。
テナントのカーペット会社も訪問させてもらいましたが、必要な内装や備品は運搬コストと運搬による化石燃料の消費を避けるため全て決まった距離内から調達しているそうです。
 また、それまでの原材料を転換するために全米自動車協会と協力して廃車の窓ガラスやタイヤを調達しているそうです。

 今では産業廃棄物の処理費用と同じコストでリサイクルできるようになりましたと言っていました。

 アパートオーナーとしての自分も小さなことからいうと、3件目に買ったオンボロアパートの共用部分の照明器具を白熱灯を省エネタイプの蛍光灯に変えたら月額の電気代が40%位下がったなんていうこともあります。
環境のためにも経営効率のためにもいいことじゃないかなと思います。

 毎年全米に広がるIREMの各支部持ち回りで開催されているカンファレンス。行くたびに新たな発見や学びや出会いがあります。

 来年の開催地は日本に最も近いハワイ。

 ぜひ、皆さんのご参加をお待ちしています。

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